小澤弘昌の私設民俗資料館
(静岡県清水町の灌漑用水を中心とした民俗と歴史)

協同慣行


ミズオトシ

オオミゾザライ

オオミゾザライ(結での作業)

水神祭の準備

水神祭

ナカボシ



年中行事 「堂庭ほか六大字」の丸池用水維持のための年中行事で、近世以前から、
行われていると考えられるものには、4月中旬のミズオトシ、下旬のオオミゾザライ、5月
初旬のミズアゲ、7月中旬の各堀の草刈と第1回のナカボシ、8月初旬の第2回目のナカ
ボシがある。これらの年中行事(特にオオミゾザライ)に参加しなければ、水を水田に入
れてもらえないという言い伝えがあるため組合員はオオミゾザライの時は全員参加する。
実際には参加しなくてもデブソク(出不足)といって、決められた金額を改良区に納めれ
ば、済むのだが全員参加する。
当番区 この灌漑用水維持のための協同慣行には、かつては、組合員全員で参加して
いたが、現在は、主に、その年の当番区が、その作業を主に行っている。当番区というの
は、1年交替で@玉川、A堂庭、B湯川、C的場、D畑中、E戸田、F久米田の順に、
堂庭以下六大字の各区の組合員が、役員とともに丸池用水の維持管理などを行う制度
である。
ミズオトシ ミズオトシ(水落し)は毎年4月18日前後に行われる。この作業は、次の手
順で行われる。先ず箱根用水と小浜用水が合流する地点である新宿の亀甲石の丸池用
水の方向に向かう堀の入り口を、土嚢でセイで(セキ止めて)箱根用水の水が流れて来
ないようにする。次に上(北)から順番に東水門から二ツ石セギ付近の払い水門(上水
門)までの大セギと払い水門を払う。それから、いつもと流れる向きを逆にして、池の水を
全て、境川に落とす。最後に、各堀を干す。かつては、この作業の後、鰻が10匹ほど池
の底に上がり、それを蒲焼きにして、皆で食べた。現在、この作業は当番区の人々と役
員が行うが、かつては組合員全員で行っていた。
オオミゾザライ オオミゾザライ(大みぞざらい)は毎年4月30日前後に行われる。この
作業は組合員全員で、東水門から二ツ石セギまでを5ヵ所に分けて、堀浚いと清掃を行う
作業である。この5ヶ所のうちの1カ所を大体1つの大字(ムラ)で分担する。この担当箇
所は、水を流す向きと反対方向に1年ごとに交替する。改良区に発展する以前は、この
作業の後に、総会を行っていた。
 小セギを作る作業は、オオミゾザライが終わった後、大字ごとに行われる。これらの作
業は、午前中に行われる。その日の午後からは、それぞれの堀ごとにそれを使用する人
たちが集まり(イイ=結を作り)、ホリザライ(堀浚い)を行う。この作業の順序はオオミゾ
ザライとは逆に、下から上に向かって(南から北に向かって)行う。
ミズアゲ ミズアゲ(水揚げ)は毎年5月8日前後に行われる。この作業では、下番当番
区の人達が二ツ石セギから順に、南から北に東水門、上水門、境川の各部をセぎ、亀甲
石付近のセギを切って、水を丸池用水の各堀に入れる。その後、上番当番区の人達が
立ち会って、下番から上番の当番区の引継と水神祭を行う。
水神祭 水神祭は、ミズアゲの後、役員、当番区の人々が共に丸池の中央部の弁天島
にある水神様(弁天神社・清兵衛神社)に集まって行う。この水神祭の神主の役は理事
長が務める。
 水神祭の準備は、新しい竹を4本切り、水神様の四方に立て、その周りに注連縄を張っ
て、お供え物を上げて終わる。お供え物は酒1升・洗米・塩と野菜・魚である。洗米と塩は
カワラケに盛る。魚はマスで、丸池に隣接している綾部養魚場から寄付してもらう。
 準備が終える頃に、ミズアゲを終えた改良区の役員・当番区の人たちが集まり、水神祭
が始まる。この祭は、理事長の挨拶から始まる。挨拶が終わると、理事長はもう一人の
理事と共に塩と御神酒を、塩、御神酒の順で四方に撒く。次に理事長が、その年の豊作
と丸池の水が充分に沸き出すことを祈った後、皆で御神酒を飲んで、乾杯する。その後
の直会で、参加者全員で、お供え物を分けて食べる。
ナカボシ ナカボシ(中干し)は毎年、7月の8日前後の3日間と8月の8日前後の3日間
の計2回、行われる。ナカボシの間は、ポンプを全て停止し、田んぼを干し、組合員全員
で南から北に向かって畦・堀の草を刈る作業を行う。

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